野球の未来

野球×科学

#26 セイバーメトリクス講座① 導入篇

今年は週1回のペースでこのブログを更新しようと思っているので、更新日を毎週日曜日にしようと思います。なので日曜日にこのブログに来てもらえれば新しい記事が更新されているはずです。もし更新されてなければ、察してください。。笑

 

それでは本題。

 

セイバーメトリクスという言葉を聞いたことがありますか?簡単に言えば野球の試合や選手の成績を評価するために使われるデータのことで、最近では野手で言えばOPSだったり投手で言えばWHIPなどよく分からない横文字を使って統計学的に野球が議論されています。

 

今回はその導入編ということで、まずセイバーメトリクスとは何ぞやというところから始めようと思います。ちなみに、これから3回にわたって紹介していくこのセイバーメトリクスですが、僕の知識だけでは大変心許ないので鳥越規央著「勝てる野球の統計学 ーセイバーメトリクスー」という本に書かれている内容をもとに説明をしていきます。

 

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まずそもそも、どうしてこのようなややこしい統計学を使って選手を評価していく必要があるのかというところです。単純に打率やホームラン、投手であれば勝利数や防御率だけではいけないのかと思う人は多いと思います。

 

打率を例に考えてみましょう。よく野球は確率のスポーツだと言われるように、10回のうち3回ヒットが打てれば一流、つまり打率3割が打撃を評価する上でのひとつのボーダーラインのように認識されていると思います。でもよく考えてみてください。ただ単に出塁ということで考えればヒットもフォアボールも相手のエラーによる出塁も全て同じ「出塁」には変わりありません。たとえ10打数2安打しかできなくてもフォアボールを10打席中2回取れれば、フォアボールが0の10打数3安打の3割バッターを「出塁率」では上回ることができます。これがセイバーメトリクスの世界では出塁率(ヒットまたは四死球で出塁する確率)が打率よりも評価対象に値する理由です。別にヒットを打てなくても、出塁能力という視点で考えればフォアボールにはヒットと同等の価値があるのです。ではエラーによる出塁はどう評価すればいいでしょうか。エラーは打者の力ではどうしようもコントロールすることはできませんし、いわば運によるところが大きいです。なので打者の「攻撃能力」そのものを評価する材料にはなり得ないと判断できます。確率のスポーツである野球においては、こうした運によって決まる要素は限りなく排除しようというのもセイバーメトリクスの考え方の特徴です。

 

同じ考え方でいくと、先発投手の勝利数も評価の対象には全くもってなりません。先発投手に勝ちがつくか負けがつくかというのは味方打線の援護、味方の守備、そして救援投手の能力など先発投手にはどうすることもできない要素に大きく依存するからです。メジャーリーグでは2018年は10勝9敗、2019年は11勝8敗だったニューヨーク・メッツのデグロム投手がリーグのシーズン最優秀投手のタイトルであるサイヤング賞を2年連続で受賞しましたが、それぞれの年でデグロム投手よりも勝利数の多かった投手は10人以上いました。にも関わらずデグロム投手がサイヤング賞をとれたのは、投球イニング数や防御率など、勝利数以外の自分の能力の範囲でコントロールできる成績がずば抜けて良かったからに他なりません。

 

このように野球では昔から使われている成績を評価する指標で、実はあまり選手を正しく評価できないものが数多く存在するため、セイバーメトリクスというものが生まれ、選手の能力を正しく評価できるようにしようという流れができたわけです。このセイバーメトリクスをいち早く取り入れて脚光を浴びたのがメジャーリーグオークランド・アスレチックスです。お金に余裕がなくスター選手を獲得できない貧乏球団が勝つために、既存の評価指標では評価の低い選手たちの中からセイバーメトリクスを使って、実は評価に値する選手を発掘し低年俸で獲得する。そして優勝争いに毎年絡むチームにまで成長を遂げたのです。この話は映画化され、ブラッド・ピット主演の「マネーボール」で詳しく描かれています。僕も観たことがあるのですが、とても面白かったのでおすすめです。

 

少し話が逸れましたが、以上がセイバーメトリクス導入編です。どうして複雑で分かりにくい統計学を持ちこんで選手を評価する必要があるのか理解できたでしょうか?次回は野手を評価するセイバーメトリクスの指標をいくつか挙げて、なぜ重要なのか、どのようにして計算するのか等を紹介していきます。

 

それではまた。