野球の未来

野球×科学

#15 ウエイトトレーニング講座①

今は大学院が学期間の休暇中なのですが、先週まで取っていた授業のうちの一つがウエイトトレーニングの理論と実践についてでした。学部生時代にも少しは勉強したことはありましたが、今回ほどしっかりとは学んでこなかったのでとても良い経験になりました。そこでこれから数回にわたってウエイトトレーニング講座と題して、僕が勉強したことをシェアしていきたいと思います。1回目の今回はウエイトトレーニングの目的別に実施方法を紹介していきます。

NCAA

負荷・重さ

セット数

挙上回数

セット間休息

筋肥大

67-85%

3-6

6-12

30-90秒

最大筋力

>85%

2-6

<6

2-5分

パワー

75-90%

3-5

1-5

2-5分

NCAAというアメリカのすべての大学スポーツを取り仕切っている機関が、ウエイトトレーニングについて提唱しているデータをまとめました。

  • 負荷・重さ:自分が挙上(持ち上げる)できる最大の重さを100%として、それぞれの目的ごとに負荷を変える必要がある。

(例)筋肥大期:スクワットの最大挙上重量が100kgだとしたら、この期間に使うべき重さは67kg~85kgの範囲に収めないといけない。

  • セット数:説明省略。
  • 挙上回数:重りを挙げる回数。
  • セット間休息:セット間にとる休息の長さ

 

  • 筋肥大:筋肉のサイズを大きくすることを筋肥大と呼び、車で例えるならエンジン自体を大きくして馬力のボトムアップを図ること。高校生や大学低学年等のまだ体の大きさが足りていないアスリートにとっては最も大事な期間とも言える。中強度の負荷で、多めの挙上回数を短い休息時間でこなすことでまずは筋肉により長い時間にわたって刺激を与えることで筋肉のサイズアップが期待できる。
  • 最大筋力:ここでは筋肥大によってサイズアップした筋肉が力をきちんと発揮できるようにする期間。車で言えば大きくなったエンジンがしっかりと機能するようにその質を上げていく過程。負荷は高強度に設定する代わりにセット数と休息時間はしっかりと確保することで一回一回の挙上の質を高める。
  • パワー:パワーとは、決められた時間の中でいかに(最大に近い)大きな筋力を発揮できるかという能力。野球の投球もスイングも、1秒未満の時間の中で大きな力を発揮する必要があるため体が出来上がっているアスリートにとっては最終段階とも言える。車で言えば、サイズもアップしその機能性も十分上がった中で、次はレースで必要となるスタートダッシュの能力を仕上げるという感じ。負荷は最大筋力より多少は下げても構わないが、とにかく爆発的な力を短時間で発揮することを意識し、行う。

このように、ウエイトトレーニングには大きく分けて3つの目的・ステップがあり、この3つを一定期間ごとに区切ってトレーニングすることでより効果的に体を作っていくことができます。1年を通したイメージでいうと、オフシーズンに入るとまずは筋肥大からスタートし、次に最大筋力、そしてパワーという順で各ステージ3-8週間程度を使いながら次のシーズンに向けて体を作っていく形です。それぞれの期間にどれだけの時間が必要かは、各アスリートの筋力レベルによって変わってきます。例えばサイズがまだまだの選手はより長い期間の筋肥大トレーニングが必要になりますし、大学上級生や社会人・プロといったサイズは十分の選手はそのほかの段階にもっと時間をかけてより筋肉の質を高めていく必要があります。とにかく、シーズンイン直前には筋肉のサイズもパワーもアップした状態を作り上げておく必要があり、シーズン中はその状態の維持に努めます。

 

次回は3つのステージごとに必要となるメニューの違いについて書いていこうと思います。