野球の未来

野球×科学

#42 ステップ幅と投球パフォーマンス

2021年ひとつ目の記事はピッチャーの投球時のステップ幅についての記事をオンライン雑誌で見つけたのでそれを紹介していこうと思います。

この記事は何か独自の実験をしてそのデータを基に書かれたものではなくて、既に発表されている複数の論文の報告をまとめたものになっているので、幅広い視点でステップ幅について考察がなされています。

結論から言うと、ステップ幅は広いほうが良いのは間違い無いです。球速も上がりますし、肩肘への負担も減らすことができます。メジャーやマイナーなどでプレーするプロのピッチャーたちのステップ幅は大体身長の80%ー85%だったと記事では書かれていて、このステップ幅はプレーするレベルが中学、高校、大学と上がるにつれ広くなる傾向にあるようです。これには間違いなく下半身の筋力の向上が関係しているでしょう。

ではステップ幅が広がることによってどうピッチングのメカニクスが変わるのかというと、まずは踏み出す位置がより遠くになる分だけ片足で体を支える滞空時間が長くなります。少し言い換えればセットポジションから前脚(右ピッチャーの左脚)を上げて、それが着地するまでの時間が延びるのです。この片脚で体を前に運んでいる時間に、投球方向への推進力(いわゆるパワー)が下半身で生まれるのです。滞空時間が長くなればなるほど、パワーを作る時間が増えるので結果として大きなパワーを生み、それがボールに伝わることで球速が上がるという仕組みです。

次に、片足が地面についていない滞空時間が長くなることで、いわゆる”体の開き”が早くなるのを抑えることができます。上半身がサードベースを向いた状態からホームベースの方向に向かって回転をし始めるのが少し遅れることになるので、体がギリギリまで投球方向に正対することなく、その分下半身で作ったパワーをより効率的に上半身、そしてボールに伝えることができるのです。

分かりやすく言えば、同じ10の大きさのパワーを下半身で生み出したとして、そのうち5を上半身に伝えるフォームか8伝えるフォームかどちらがいいのかということです。

まとめると、ステップ幅を広げることのメリットとして、片足で体を支える滞空時間が長い分、1)そもそも下半身で生み出せるパワーが大きくなること、2)”体が開く”のが遅れる分、パワーを下半身から上半身に送り込める割合が高まることの2点が挙げられます。

しかしながらステップ幅の広い投球フォームには当然デメリットも付いてきます。それは既に少し触れましたが、体力をより消費するということです。小学生のピッチャーにステップ幅を広げろと指導しても、うまくできないということが起こり得ると思いますが、それはその子の技術がないのではなくて、根本的に筋力がまだ十分についていないということが原因とも考えられるのです。

また、最初はできていたのに試合を通してそのステップ幅を維持できないということも起こり得るとは思いますが、それもやはり下半身の筋持久力が十分でないことが一因となるでしょう。

以上が今回の内容になります。本当はもっと細かいことまで記事では説明がされているので、英語の記事ではありますが、興味のある人はぜひチャレンジしてみてください。リンクを貼っておきます。

それでは。

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