野球の未来

野球×科学

#5 [コラム]球数制限についてどう思う? ひとつご提案。

高校野球における投手の球数制限議論がいよいよ本格化してきていますね。

皆さんはどう思いますか?制限は必要でしょうか?

 

個人的には絶対に必要だと思いますし、今後何らかの規制が加えられるのは間違い無いでしょう。

僕は医学の専門家ではないので、球数をどの程度に・どの様に制限するのかが適切なのかは分かりません。

でも未来ある高校生にとって何よりも大事なのは、目の前の試合に勝つことではなく、一人一人の将来です。これについては賛否両論ありますが、甲子園を目指すことを全てとして、故障もいとわないという考え方は間違っていると思います。上のカテゴリでも元気に野球を続けること、あるいは大好きな野球を年老いても続けること、これより大切なことなどありません。もちろん球児たちは全力で目の前の勝負に挑むでしょう。でもそこはしっかりと周囲の指導者の方々がコントロールしてあげる必要があります。

高校野球が部活動の一環というシステムを取る限り、あくまで根幹を成すのは"勝利至上主義"ではなく"人間教育"だということを周囲の大人たちにはくれぐれも理解していただきたいなと思います。勝ちに固執してその厳しさを知ることが人間教育だとおっしゃる方もおられますが、人間教育とは子供達の心身の健やかな成長を指しており、身体的に障害を負うリスクを取ることがその精神にそぐうとは考えらえません。高校野球の名将と呼ばれる影響力を持つ方達がこの部分を履き違えた発言をされていることが個人的には残念でなりません。 

大船渡高校の佐々木投手が地区大会の決勝戦で怪我のリスクを考慮して出場機会がなかったことについても、佐々木君本人を含む大船渡ナインがその起用法に納得していたかどうかは監督さんとナインたちとの間の問題であって、佐々木君に出場機会が与えられなかったこと自体は、ゆくゆくは日本を背負って世界で活躍するであろう選手の将来を第一に考えた素晴らしい決断だと僕は言いたいです。

アメリカにはピッチ・スマートという、具体的に何球以上投球した場合は最低何日休ませないといけないということを年代ごとに定めた明確なガイドラインもありますし、これもひとつ参考にできるのではないでしょうか?

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ピッチ・スマート

注釈) Age:年齢 Daily Max:許容されている1日の最大投球数  ○○Days Rest:休息日数 N/A:定められていない(許容されている最大投球数の範囲なら投球可能)

 

その上で、もうひとつの解決策として僕が提案したいのは、金属バットの反発係数を木製バット並みに落とすことです。反発係数というのは、バットがボールをはじき返す度合いのことです。金属バットは木製バットに比べてスイートスポット(芯)の部分が広く、反発係数も高いため、多少打ち損じたとしても容易に強い打球を打ち返すことができるのです。つまり、バットの反発係数を今よりも落とすと圧倒的にボールが飛ばなくなり、ヒットを打つことが難しくなります。すると現在の極端な打高投低(打者のレベルが高く、投手のレベルが低い状態)は劇的に改善されるでしょう。言ってしまえば、今の高校球児たちの打撃レベルは既に木製バットを扱えるレベルまで十分に上がっているということです。この反発係数の低い金属バットは、これまた実はアメリカでは導入されており、いくつかの利点が考えられます。

1. 必然的に打撃が難しくなることで投手が打者を打ち取りやすくなり、その結果、投手が試合で要する球数を飛躍的に減らせる。

2. 高校より上のカテゴリ(大学、社会人、プロ)では木製バットを使うため、日本の高校生は金属バットからの適応に苦労することが多いが、このギャップを小さくできる。つまり、高校段階での打者の打撃技術もさらに上がる。

3. 反発係数の低い金属バットではなく、木製バットを導入する方が理想的だが、もし木製バットを導入すると頻繁にバットが折れてしまうので、すぐに交換が必要になる。すると、予算の少ない学校(特に公立校)にとっては厳しい。しかし反発係数が木製並みの"金属"バットであれば、頻繁に折れることはないため予算的にも問題ない。

 

この方法であれば投手の球数も抑えられつつ、高校生の打撃技術の向上も見込めます。上のカテゴリに、より質の高い選手(故障のない健康な投手、打撃技術の高い野手)を送り込むことが期待できるでしょう。

 

球数制限の議論がこれから活発化していくなかで未来ある球児を守るためにも、高校野球だけでなくそれより下の年代にも適切なルールが設けられることに期待するばかりです。

 

注) [コラム]シリーズでは、あくまで一個人の考えを書かせてもらっています。なるべく客観的な視点となるように努めていますが、論文等の科学的根拠を基にはしていないことを理解していただけると幸いです。