野球の未来

野球×科学

#8 [論文]メディシンボールトレーニングの本当の効果とは?

今回は当たり前といえば当たり前の練習法を紹介します。ただ、個人の経験則から当然効果的だと思っている練習が実際にもしっかりと効果のあるものだと証明されることもとても大事なことです。

 

ズバリ、その練習法とはメディシンボールスローです。論文では12週間のメディシンボールトレーニングが高校野球選手のバットスイング速度をどう向上させたか実験しています。ある程度の重さのメディシンボールを両手で持ち、打撃フォームを真似する形で、打撃でいうところのインパクトの瞬間にボールを前方へ全力で放り出すというごくごくオーソドックスなトレーニングです。

※もしどのようなものかよく分からなければYouTubeで「メディシンボールトレーニング 野球」と調べてみてください!数多くの方々が動画をアップされています。

 

そしてその結果、このメディシンボールトレーニングによって期待通りにスイング速度を向上させることに成功しました。

 

この時に注目したいのはメディシンボールスローが体のどのような機能を向上させて、その結果スイング速度が上がったのかということです。実は筋力が向上したのがいちばん大きな理由ではないんです。この実験で目的とされたのは、メディシンボールトレーニングによって、野球のスイングに必要な全身の連動性を高めることです。野球のスイング(だけでなく投球も同じ)は全身の回転運動によって行われますが、この時にお尻・体幹・肩の胴体部分の回転の連動が不可欠であり、その連動性を高めることでスイング速度の向上に成功したと論文で報告されています。(身体をムチのように操るというと分かりやすいでしょうか?)

ちなみに、この連動性の向上は投手のトレーンングにも応用可能だと考えられます。体の使い方を覚えるためには、メディシンボールはもってこいの練習法ではないでしょうか。

 

筋力強化はウエイトトレーニング等の基礎トレーニングでまかない、その上で、強化された各部位の筋肉(体全体)の連動性を高めることでさらにスイング速度を上げることができると、この研究により分かりました。この連動性を欠くと、いくら筋力値が高くてもパフォーマンスが思うように伸びないのは想像できると思います。特に高校生年代では、体は出来上がってきているのにそれを上手く操れていないいっていないことでせっかくのポテンシャルを活かしきれていない選手が多いように感じます。

 

筋力のアップだけでなく、その筋肉をどう実際の動きに繋げていくのか、いかに自分の体を操るのかということも、とても大切な要素であることを理解してもらえればと思います!

 

参考文献:

Szymanski, D., McIntyre, J. S., Szymanski, J., Bradford, T. J., Schade, R. L., Madsen, N. H., & Pascoe, D. D. (2007). Effect of torso rotational strength on angular hip, angular shoulder, and linear bat velocities of high school baseball players. Journal of strength and conditioning research, 21(4), 1117-1125.

高校野球選手の臀部の角度、肩の角度、およびバットのスイング速度に対する体幹部の回転強度の影響」