#9 [論文]投手の球速upにつながるプライオメトリクス
プライオメトリクスというトレーニングを今回は紹介してみたいと思います。
プライオメトリクスとは、短い時間の間に爆発的な力を発揮するために行うトレーニングで、一般的なウエイトトレーニングのように筋肉そのものを大きくして最大パワーを向上させるのではなく、筋肉が短時間で大きい力が発揮できるようにするために筋肉内の"神経系"の発達を起こすものです。要は投球動作のような瞬発的な動作の際には、いくら筋力があっても1秒に満たない時間の中で本来の力を発揮できないようでは意味がないので、その短時間で大きな力を発揮することをサポートする神経の働きを鍛えようというトレーニング法がプライオメトリクスになります。
論文では、8週間にわたって大学生投手にこのプライオメトリクストレーニングを上半身をターゲットにして行ってもらい、その結果平均して2キロほど球速が上がったという結果が報告されています。Google画像検索で"Ballistic six"と調べてもらうと一番最初に出てくる、チューブやメディシンボールを使ったものがこの論文で使用されたプライオメトリクストレーニングです。このBallisitic sixというのは、15年ほど前にすでに提案されていた野球に特化した上半身(肩・肘)のプライオメトリクスで、野球のパフォーマンス研究の世界ではよく使われているトレーニングになります。
順に説明をしていくと、
1) a&b: 肘を90度に曲げた状態で伸縮性のチューブを引っ張り、180度体の内から外側に向けて開く
2) c&d: 肘を肩のラインと平行になるところまで上げた状態で90度に曲げ、チューブを引っ張りながら肘を90度旋回する
3) e&f: サッカーのスローイングと同じ感覚で6ポンド(2.72kg)mのメディシンボールを壁に向かって投げる
4) g,h,i: 体は半身(横向き)で2ポンド(0.91kg)のメディシンボールを横方向投げる
5) j,k,l: 体の向きは前向きで、4)と同じく2ポンドのメディシンボールを今度は後ろ方向に投げる
6) m,n,o: 野球の投球動作のように2ポンドのボールを投げる
この6種類のトレーニングを各10回、3セット、各セット間30秒の休息を挟んで行う。
今回紹介したBallistic six以外にも、また違う種類のプライオメトリクス(同じ上半身ターゲットでも違う動きをするものや、下半身をターゲットにしたものなど)もたくさんあるのでぜひ調べてみてください。
<参考文献>
Carter, A. B., Kaminski, T. W., Douex Jr, A. T., Knight, C. A., & Richards, J. G. (2007). Effects of high volume upper extremity plyometric training on throwing velocity and functional strength ratios of the shoulder rotators in collegiate baseball players. The Journal of Strength & Conditioning Research, 21(1), 208-215.